【過去Blog/資料】青森県田子町の昔話
こちらの記事は、「めどち☆これくしょん」の開催にあたり、実際に収集した昔話・伝承などを紹介しております。
【「めどち☆これくしょん」に参加した経緯・地域活動について】
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【「めどち☆これくしょん」で使用されたもののけキャラクターに関して】
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本来であれば、自分が昔話や伝承を収集した市町村すべてに関して紹介記事を掲載するつもりでしたが、時間の都合上、青森県田子町のみの掲載となっております。今後、機会があれば、青森県三戸町・青森県南部町に関しても記事をまとめ、掲載したいと考えています。
(2016年掲載当時の文章・表現で再掲載しております)
青森県田子町
「にんにく」で全国に有名な青森県の田子町。
田子牛とか他にも美味しいものがいっぱいで、訪れる機会も多いです。自然豊かな風土が育む様々なものは、私たちの心に懐かしいようなノスタルジックな気持ちを呼び起こしてくれる、そんな町です。
さて、昔話・伝承の紹介として、最初にこの町を紹介するのは、田子町において、”聞き取り調査”を実施したからです。文化や風土を書き記した文献は数多くありますが、人間の生活や心によって、常に変質・変化していくもの。そんなことを踏まえて、あえて”生”の聞いた話を紹介しようと思いました。
もうお察しの方はいるかもしれませんが、今回の話は「伝承」が主な内容で、しかも、実話を含んだ話となります。信じるか?信じないのか?それは、皆様のご想像にお任せします。
こういった不思議な伝承が伝わっていること。そんなことも田子町の魅力かもしれません。
身近に隣り合う世界
聞き取り調査をした際に、こういった発言がありました。
『文化や技術が発達し、現代では伝説や伝承は形骸化していった。しかし、生活や身近な習慣、考え方に溶け込んでいったものがある』
もののけ、妖怪、伝説、伝承…昔から伝わる話は、現代科学では解明出来ないことや今の常識では理解できないこともたくさん存在しています。
あんなに恐ろしかった夜の闇は、現在は電気の力で恐怖を感じないものになり、過去の豪傑たちの伝説も、今ではスポーツ選手と比べてしまうことの出来る現代。そんな中にあっても、私たちの心の中には、”理解できないこと””解明できないこと”に対する畏怖や好奇心でいっぱいになります。
田子町の伝承や昔話は、他の地域と違い、身近に感じられる話ばなりです。そんな隣り合う世界を感じることが出来たなら…私たちは、もう一度、”もののけ”たちに会うこと出来るのかもしれません。
人を”化かす”者たち
田子町において、最も身近で存在感を放つ”もののけ”こそ、『きつね』です。同様に「たぬき」の話も残っているそうです。
(こちらは、イベントでキャラクターになったきつねのザンザ)
きつねが人を”化かす”という話は、全国各地で見られる伝承です。あの有名な陰陽師・安部清明も母親が「きつねだ!」なんて話も残っていますね。日本人には古来から馴染みのある動物なのかもしれません。
”きつね”をそういった馴染みあるものと考えてみると、私たちの身の回りには、「お稲荷さん」の神社がありますし、ねずみを捕まえることから農耕の信仰として作物を守るというような性格も考えることが出来ます。
「九尾の狐」なんて、大妖怪になっているものもありますし、マンガや小説などで目にする機会も多いのではないでしょうか?
田子町の伝承によりますと…”きつね”と”たぬき”で「化かし方」が違うそうです。
きつね
周辺も巻き込んで幻惑させる。妖気のようなものを発し、人間に幻を見せたり、勘違いをさせたりする。
たぬき
自分自身が変身・変装して、人を化かす。
というような違いがあるそうです。ただし、どちらも完全に人間に化けることは出来ず、話をすると語尾がおかしくなったり、辻褄の合わないことが出てくるそうですよ。
そんな田子町のきつねの話…次回から紹介していこうと思います。
松林のきつね
昭和の初めの頃。
田子町にある山の中腹で、男が木を切ったり、運んだりしていた。
田子町にある山の中腹で、男が木を切ったり、運んだりしていた。
この山は、この男が管理する場所で、小さな社を立て、神様を祀っていた。 社の近くを綺麗に掃除し、邪魔となる木を伐っては、まとめ運び出している最中だった。
「マツ林には、キツネが住んでいる」
そんな言い伝えが男の住んでいる地域にはあった。
そんな言い伝えが男の住んでいる地域にはあった。
男が社の周りで、作業をしていると、どこからか声がする。
「が、これ、どごさいくの☆※・・・・」(あなたは、どこにいくの?)
「が、これ、どごさいくの☆※・・・・」(あなたは、どこにいくの?)
はっ、と声に気づき、作業をやめ、声の主を探してみた。
「が、これ、どごさいくの☆※・・・・」
「が、これ、どごさいくの☆※・・・・」
友人の声に似ていた。しかし、こんな場所に友人がいるはずがない。
「が、これ、どごさいく▼☆※・・・・」
「が、これ、どごさいく▼☆※・・・・」
声は山の尾根から聞こえ、語尾がはっきりしないのだった。
「が、これ、どごさい〇▼☆※・・・・」
やはり、知り合いの声だったが、なんだかおかしい。
「が、これ、どごさい〇▼☆※・・・・」
やはり、知り合いの声だったが、なんだかおかしい。
男は、「これはきつねが自分のことを”化かそう”としている」そう感じた。 昼が過ぎたばかりだったが、化かされてはたまらないと作業を切り上げ、家に戻った。
社があって、きつねは尾根から降りられなかったのだろうと男は語った。
考察
「落ちが弱い!」と感じた方もいらっしゃる方もしれませんが、”実話”ですので、ご了承ください。 実は、この話なんですが、理になかった話となっています。
『林学』(森林を対象にする学問)において、木を植える際には「尾根マツ、谷スギ、中ヒノキ」という原則があります。樹木を育成する際に土壌の水分含有率が関係するので、この言葉通りに植栽すると、育ちがいいという言葉です。
尾根には「マツ」。「マツ林」には「きつね」。 起こり得る状況の話だなと思いました。皆さんは、山で”誰かの声”が聞こえる時がありますか?
マツ林の近くで、あなたを呼ぶ声がしませんか?
橋のきつね
ある地区には、田んぼを行き来するための橋がいくつもあるという。 その中で山に近い橋には「きつね」が出るという噂があった。
”ある村人が農作業をしていると、無人の自転車が橋を横切るのを見た”
そういった不思議な噂が数多くあった。
そういった不思議な噂が数多くあった。
ある夏の日のことである。
夕暮れ時に村人が橋の近くの田んぼで作業していた。
夕暮れ時に村人が橋の近くの田んぼで作業していた。
用水路の整備をしながら、夏の夕暮れの涼しさを感じていた。
ふと道の方を見ると、誰かがこちらに走ってくる。
遠くいた時には分からなかったが、友人のように思えた。
顔が確認出来る距離になると、村人は、走ってくる友人の顔に驚いた。
物凄い形相で、目も血走っている。なにかあったのだろうか?
走りながら、こちらにどんどん近づいてくる。
村人は、声をかけてみた。
「おい!」
しかし、友人は反応もせず、表情は変わらない。
こちらを見ようともしない。
あいさつをすれば、すぐに返してくれるような陽気な男だったが、村人は「これは何かある」と心配になった。
男が向かっているであろう先を見ると、橋の上にきつねが一匹佇んでいた。
ゆっくりと友人を見つめながら、ゆっくりゆっくりと尻尾を左右に振っている。
「これは化かされているだな…」村人はそう思った。
走ってきた男が橋まで来ると、先ほどまでいたきつねの姿は消えていた。
「おめぇはなにを見たんだ?」
橋まで走って来て、何かを探す素振りをみせる友人に声をかけてみた。
「いや、ここさ。この世のものとは言えない美人がいて、ここまで来なければと思って、走ってきた」
きつねは、人間に幻覚を見せると言う。
きっと友人も幻覚を見せられ、化かされたのだろうと二人は笑いあった。
考察
こちらも”落ちが弱い”話なんですが、面白い話です。
前の投稿で書きましたが、きつねは、”妖気のようなもので人を幻惑する”。そんなものにあてられた人の話ですね。ちなみにですが、”たぬき”だと村人にも美人の姿が見えるそうです。
美人を走って見に来るって…いやー、なんだかそんな化かされ方をされたいような、されたくないような。何か心の隙間を狙われたような話ですね。
この話のキーポイントなりそうなものは、『橋』。生活基盤として水路が活用されてきた当初から、生活に必要なものです。我が国においては、水害や用水路の関係から橋をかける技術は、大切にされてきました。
技術が向上し、昔よりも橋をかけることが容易になった現在ですが、『橋』というものに対して、私たちは特別な感情があるのかもしれません。
話の中に「美人」が登場しますが、橋にまつわる民間信仰として、「橋姫」も有名です。『橋』における往来を把握し、また、その外の世界と町を監視する役目を果たす守り神が「橋姫」という民間信仰ですが、そういったものと”きつね”という二つが混じったような話ですね。
きつねと橋の伝承などは、全国各地に話が残っているそうです。田子町のこの話もリンクするのではないでしょうか?。
橋の上の美人には、ご用心!
化けきつねの話
今から50年ほど前の出来事。 町の街灯は、今よりも暗く、夜の道は寂しかった。
今では、どの家庭にもあるテレビでさえ、高級品の時代。 家族でラジオを聞くのが日課だった頃のお話。
今では、どの家庭にもあるテレビでさえ、高級品の時代。 家族でラジオを聞くのが日課だった頃のお話。
田子町に住むAくん。小学5年生。 農業を営む父と母、しきたりや風習を大切にする祖父母。 妹はまだ幼く、いつもAくんが面倒をみていた。
山には木々が茂り、子供たちはそこで走り回って遊んでいた。
ただ、山からの帰りが遅くなると… 祖母からいつもきつく注意を受けた。
ただ、山からの帰りが遅くなると… 祖母からいつもきつく注意を受けた。
「山には”きつね”がいる。帰りが遅いとイタズラされるよ!」
Aくんは、祖母のそんな言いつけをいつも疎ましく感じていた。
Aくんは、祖母のそんな言いつけをいつも疎ましく感じていた。
山の中で”きつね”と出会っても、何もせずただこちらを見ているだけ。 山は自分たちの遊び場だ。イタズラされても、何も怖くない。
「キツネが人を化かす?、そんなことあるわけない」
祖父も山に入る際には、「キツネに気をつけろ」と言った。
「あいつらは、完全に化けれない。得たいの知れない声を聞いたら、すぐに山を降りるんだ。それが化かされないコツだな」
「あいつらは、完全に化けれない。得たいの知れない声を聞いたら、すぐに山を降りるんだ。それが化かされないコツだな」
ある秋のことだった。
今日は父も母も祖父も米の収穫の準備のため、帰りが遅くなる。 近所の人たちも、みんな出払ってしまうらしい。 いつもなら、一緒にご飯を食べる父と母は今日はいない。
今日は父も母も祖父も米の収穫の準備のため、帰りが遅くなる。 近所の人たちも、みんな出払ってしまうらしい。 いつもなら、一緒にご飯を食べる父と母は今日はいない。
Aくんは、家に帰ってくると、薪の準備を始めた。
家の裏山をふと見てみると、夕暮れの中、山がざわめいているような気がした。
家の裏山をふと見てみると、夕暮れの中、山がざわめいているような気がした。
夕食となり、妹と祖母との3人ご飯を食べた。
幼い妹が「ばっちゃ、かっちゃはいつ帰ってくるの?」と。
幼い妹が「ばっちゃ、かっちゃはいつ帰ってくるの?」と。
「さぁね、今日はみんな遅くなる。もしかしたら、夕飯を入れた”重箱”を取りに来るかもしれないけれどね。遅くなるから、今日は早く練るんだよ」
Aくんは、父・母・祖父、そして、近所の大人もいない、いつもと違う夜をなんだか不安に感じた。胸騒ぎがするが…なにも起こらないだろう。
祖母はAくんに「早めに寝床に入りなさい」と言った。
いつもは祖父の聞いているラジオをこっそりいじってみようと思ったが、それが出来なくて少し期待はずれだった。
いつもは祖父の聞いているラジオをこっそりいじってみようと思ったが、それが出来なくて少し期待はずれだった。
布団に入り、目を閉じる。
窓の方から、外の虫たちの声が聞こえ、居間の時計の針の音も聞こえてくるようだった。
窓の方から、外の虫たちの声が聞こえ、居間の時計の針の音も聞こえてくるようだった。
妹も祖母も、1階の祖母の部屋で寝てしまった。 2階には、今日はAくん一人だけ。
眠ろうとしたが、なんだけ寝つけない。
眠ろうとしたが、なんだけ寝つけない。
そんな時、家の外から足音が聞こえた。
ざっ、ざっ、ざっ・・・・
だれか、来たのか?母だろうか? 夕飯が入った重箱を取りにきたのかもしれない。
足音は、玄関付近まで行ったと思うと、そこからは何も音は聞こえなかった。
足音は、玄関付近まで行ったと思うと、そこからは何も音は聞こえなかった。
勘違いだろうか? 母親なら、家の中に入ってくるだろう。
泥棒だろうか?
泥棒だろうか?
すると…
「重箱を取りにきたすけ、開けてけろじゃあ」
玄関から大きな声で母の声が聞こえた。
玄関から大きな声で母の声が聞こえた。
はやり母だった。
家に入ってくればいいのに… わざわざ、夜に大声で呼ぶなんて…
家に入ってくればいいのに… わざわざ、夜に大声で呼ぶなんて…
「重箱を取りにきたすけ、開けてけろじ▲☆※!」
もう一度、声がする。
んっ、母の声だが、なんだかおかしい。 聞き慣れた声のはずなのに…別人のように感じる。
んっ、母の声だが、なんだかおかしい。 聞き慣れた声のはずなのに…別人のように感じる。
声はするが、玄関には入って来ず、家の中にしばし沈黙が流れていた。
玄関に行ってみるべきか?でも、怖い…
玄関に行ってみるべきか?でも、怖い…
胸がドキドキして、どうしようか躊躇っていた。
「重箱を取りにきたす※◆・・・、開けてけろじ▲☆※・・・!」
ガラガラっ!祖母が自分の部屋から出て行く音が聞こえた。
ガラガラっ!祖母が自分の部屋から出て行く音が聞こえた。
どすどすっ!玄関に向かっていく。 どるどるっ、バン!!!!祖母が玄関を開けて、外へ出て行った。
今の声はなんだったのだろう? 祖母が行ったから、大丈夫だろう。
Aくんは安堵して、眠りに落ちていった。
Aくんは安堵して、眠りに落ちていった。
朝になり、朝食を食べに居間に行ってみると、 父も母も祖父も、いつものように食卓についていた。
「昨日の声は?もしかしたら、夢だったのかもしれない」
Aくんは、昨日感じた不安を思い出したが、勘違いだったような気がして、途端に恥ずかしくなった。大人がいなかったから、少し寂しかったかもしれない。
Aくんは、昨日感じた不安を思い出したが、勘違いだったような気がして、途端に恥ずかしくなった。大人がいなかったから、少し寂しかったかもしれない。
朝食を食べていると、妹が母に向かって、
「かっちゃ、昨日、重箱取りにきたの?」
「いや、昨日は家に来なかったよ。朝に戻ってきたんだ」
と母は言った。
「かっちゃ、昨日、重箱取りにきたの?」
「いや、昨日は家に来なかったよ。朝に戻ってきたんだ」
と母は言った。
Aくんは驚き、思わず祖母の方を見た。
「ばっちゃ!ばっちゃ!昨日の声は…??????」
「あぁ、あれね、あれは”きつね”の仕業だよ。玄関から出たら、こっちを見て、尻尾を降っていたよ。”重箱”に入った飯を食べたかったみたいだね」
祖母は笑いながら、そう答えた。
「ばっちゃ!ばっちゃ!昨日の声は…??????」
「あぁ、あれね、あれは”きつね”の仕業だよ。玄関から出たら、こっちを見て、尻尾を降っていたよ。”重箱”に入った飯を食べたかったみたいだね」
祖母は笑いながら、そう答えた。
それからは、Aくんも山に入る時は、遅くならないように家に帰ってくるようになった。
「あの時の声は、忘れられないなぁ。玄関に行ったら、化かされていたのかもな」
そう50年後のAくんは、私に語った。
そう50年後のAくんは、私に語った。
考察
聞いた話の中で、一番生々しい実体験がこちらの話です。少し背筋が寒くなった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この話はAくんとその妹さんから聞いた話となります。
”家にには招き入れた者しか入ることが出来ない”。怪談話や妖怪の話ではよくあることだと思います。このお家にも伝統的に神棚があって、そこに神様を祀っているということでした。
きつねもそういった守り神には、勝てないようで、玄関から声色を真似て呼ぶことしか出来なかったようですね。
おそろく、こういった体験談は、田子町の方に話を聞くと、同じような話を見つけることが出来るのでは?と思っています。ただ、この体験が”特別なこと”ではなくて、戒めとしてや地域のルールとして、根付いていることが面白いことだと感じますね。
隣り合う世界は、現代の常識が通用しない世界かもしれません。
その住人たちが、あなたのご飯を狙っているかもしれませんよ(・∀・)
その住人たちが、あなたのご飯を狙っているかもしれませんよ(・∀・)
長沼の妖怪
(こちらは、めどち☆これくしょんの白蛇をモチーフしたキャラクター)
田子町長坂。地名の由来は長い坂の合流点にあるため。この長坂には「ぬのがらみ」という”もののけ”が住むと伝えられています。
田子町の長坂には布沼という大きな沼があった。そこには妖怪が住んでいて、「布がらみ」と呼ばれていた。
この沼の主は、布に化けて沼の岬の垣根に下がり、取ろうとする人がいると伸びて絡みつき、そのまま沼に引き込むと怖れられていたという。
妻と娘を沼に引き込まれた男が「布がらみ」を退治しようと決意した。
沼の岬に着くと神に一心に祈ると、沼の水面がざわめいた。神のお告げにより持ってきていた鳩の卵を割り、沼に投げ込んだところ、大きな音を立てて「布がらみ」の死体が浮かび上がってきたという。それは大きな白蛇の姿だったという。
沼の岬に着くと神に一心に祈ると、沼の水面がざわめいた。神のお告げにより持ってきていた鳩の卵を割り、沼に投げ込んだところ、大きな音を立てて「布がらみ」の死体が浮かび上がってきたという。それは大きな白蛇の姿だったという。
(みちくさ鹿角街道より抜粋・森山泰太郎、北彰介『青森の伝説』)
(布沼は現在はないとされていますが、長坂にあった池。布沼の名残り?)
考察
”白蛇”は、田子町だけでなく、全国各地・三八地方にも多く存在するモチーフです。
”神様”、”神様の使い”、”化物”。様々な側面を持ちますが、私たち、人間にとって特別な何かを感じさせるものではないでしょうか?
木にかかっている”布”。”天女の羽衣”の話は有名ですが、そういった話とのつながりも感じさせます。現在でも、道端の木に布や服がかかっていたら、かなり気になりますがね^^;
木にかかっている”布”。”天女の羽衣”の話は有名ですが、そういった話とのつながりも感じさせます。現在でも、道端の木に布や服がかかっていたら、かなり気になりますがね^^;
”卵”というものも面白いですね。
コロンブスの卵やイースターエッグなど繋がることはないと思いますが、生命の生まれるものに対しての神聖なものを感じますね。
コロンブスの卵やイースターエッグなど繋がることはないと思いますが、生命の生まれるものに対しての神聖なものを感じますね。
この周辺を通る際には、”布”にお気をつけください。
東北地方に残る”オシラ様”
南部曲り家(馬小屋と家屋が一体化した伝統的な家)など、馬に関わる場所に伝承が多い話となります。”柳田國男”の「遠野物語」にも登場し、全国的に広まったのではないでしょうか。 昔話ももちろん、残っていますが…どちらかと言えば、”民間伝承””民間信仰”の類です。
神棚を飾る家も少なくなった現代ですが、家の守り神は現在も私達のそばにいて、静かに見守ってくれているのではないのでしょうか。今回は、田子町に伝わる「オシラ様」について記事を投稿したいと思います。
この「オシラ様」という題材、とても色々な話が伝わっておりますので、ほんの一例だと思ってくだされば。
昔話なども数多く扱われる題材ですし、民俗学や歴史学としても、様々な説がある話です。ちなみになんですが、文献や歴史的な研究では、私の住んでいる地域には「オシラ様」の信仰がないことになっているのですが、近所の人に話を聞くとあるんですよね。
文化や伝承といったものは、解明することや研究すること、情報を集めることが難しいと思った題材でもあります。
(こちらは、イベントで使用したオシラ様モチーフのキャラクター)
遠野物語に出て来るオシラ様
その昔、遠野地方に美しい白い肌の娘がいた。 飼っている馬の世話をよくしていた。
結婚の話も出るが、年頃なのにかかわらず、娘はそういった素振りを見せない。
結婚の話も出るが、年頃なのにかかわらず、娘はそういった素振りを見せない。
父親が怪しんで調べてみると、飼っている栗毛の馬に恋をしていることが分かった。
怒った父親は、馬を木に吊り下げ、殺してしまった。
怒った父親は、馬を木に吊り下げ、殺してしまった。
娘は、馬が死んだことを悲しみ、すがりついて泣いた。 悲しみにくれ、馬にすがりつく娘を見た父親は、また怒り、馬の首をはねてしまった。
すると、娘は、はねられた馬の首に飛び乗り、空高く舞い上げると、どこかに消えてしまった。
父親は娘が消えてしまったことに悲しみ、床に臥せってしまった。
父親は娘が消えてしまったことに悲しみ、床に臥せってしまった。
床に臥せった父親の夢の中に娘が現れた。
夢の中で娘は、臼の中の虫を桑の葉で飼うこと。そして、その虫を自分だと思って可愛がってほしいと伝えた。
夢の中で娘は、臼の中の虫を桑の葉で飼うこと。そして、その虫を自分だと思って可愛がってほしいと伝えた。
虫に桑の葉を食べさせ、育てると美しい繭を作り、それを糸として紡いだ。これが養蚕の始まりである。
田子町のオシラ様
田子町にある裕福な家があった。 財産を蓄え、とても大きな家であった。
しかしある時に、家から火が出て、大火となり、すべて焼け落ちてしまった。
こんな大火があっては、すべて燃えてしまっただろうと思ったが、焼け落ちた家の中心部に桑の木が青々と残っていた。
その地域の人々は、その桑の木を削り、「オシラ様」として、火事除けの守り神として扱ったという。
考察
「オシラ様」のキーポイントとなるものは、馬・娘・桑などとなります。
養蚕や家の守り神などの共通するものがありますが、民間信仰のため、一つの意味では解析することの出来ない内容が多いです。 ”2体1対の神様”ということで、馬と娘の顔をした木彫の像に着物などが着せてあるのが、よく知られた姿でしょうか?
田子町は、少し意味合いの違うものとなっています。
「オシラ様」には信仰上の制約もあるらしく、「年に一度、遊ばせる」(家の梁から降ろし、イタコさんを呼ぶなど)、「獣の肉は口にしてはならない」など様々なことが伝えられています。
”養蚕”という日本古来から行われている産業が鍵となるものですが、三八地域においては、あまり盛んではなかったと思われますので、「火事除け」というものに意味が変化したのかもしれません。
現在では信仰しているお家はあるそうです。
”家の守り神”。あなたの家にはいらっしゃいますか?